戦略と偶然が生み出す最凶のダンジョン。『勇者のくせになまいきだ:3D』の魅力

前置きが不要な方はこちらから。

PSPといえばまず「『モンスターハンター』シリーズのハード」とイメージする人は多いのではないでしょうか。
私もその一人です。もはや狩りの道具と言っても過言ではなかった。

しかし、個人的にはもう一つ思い浮かぶんですよね。
たくさんのちびキャラが動き回るゲームが多かったなあ」というイメージが…。

PSP時代の名作『勇なま』シリーズ

前述のイメージですが、具体的には『パタポン(PATAPON)』、『ロコロコ(LocoRoco)』、そして本題の『勇者のくせになまいきだ。(通称:勇なま)』シリーズ辺りから来ています。

どれもビッグタイトルというほどではないですが、当時を知っている人からすると見覚えのあるタイトルなんじゃないでしょうか。

その中でも自分が熱中していたのが『パタポン』シリーズと『勇なま』シリーズです。

両シリーズ3作品ずつの計6作品、全て同じ友人から借りていました。

本当にありがとう。

『パタポン』シリーズについては、初代『パタポン』が2017年に、次作の『パタポン2 ドンチャカ♪』が2020年に、それぞれPS4版として復活を果たしています1

一方の『勇なま』シリーズは、2017年にまさかのVR専用ソフト『V!勇者のくせになまいきだR』として別ジャンル2での復活を果たしましたが、一方で従来のシリーズは発売から約15年間、PSPでしかプレイできませんでした。

状況が変わったのが2022年。
定額サービス「PSPlus」のリニューアルに伴い、「クラシックスカタログ3」にてPSPタイトルの一部がプレイできるようになり、サービス開始からほどなくして(2022年7月)『勇なま』シリーズ第三作の『勇者のくせになまいきだ:3D』が同カタログに追加されました。

さらに、2023年1月には突如トロフィーまで追加されています。

PSPタイトルに後付けでトロフィーが付けられたのは結構驚きました。
プレイする動機にもなるので良いですね。

初代『勇者のくせになまいきだ。』ではなく第三作だけが追加されたのはけっこう意外ですが、『勇なま』シリーズ(VR版除く)は基本を変えることなく順当に要素が追加されていっている印象なので、集大成の作品のみという判断になったのかもしれません。
前作プレイが推奨されるタイプのゲームではないので、この辺りは問題にならないかと思います。

以下、未プレイの方向けにこのゲームの個性と魅力を簡単に紹介します。

ゲームシステム

一言で言うなら「タワーディフェンス」系になるんでしょうか。
ただし、舞台は塔や城ではなく「地下」です。

プレイヤーは「破壊神」として魔王に召喚され、破壊の限りを尽くす・・・のではなく、2D世界の地下を掘り進めてダンジョンを生成します。これどちらかというと創造神じゃないか?

養分を持つ緑の土を掘ると魔物が登場するので、適当に掘り進めていくだけでも魔物だらけのダンジョンを作ることができます。

一定時間の経過後、作ったダンジョンに勇者達が攻め込んでくるので、魔物の群れによって彼らを倒すことができたらステージクリアとなり、ダンジョンをさらに掘り進めて次なる勇者の襲来に備える、というのが基本的な流れになります。

勇者を倒すことができず、ダンジョンの奥に配置した魔王が連れ去られてしまった場合はゲームオーバーです。

生態系に生きる魔物たち

シンプルそうにも見えるこのゲームですが、一筋縄にはいきません。
考えなしに堀り進めていくだけでは、まずクリアできないゲームです。

なぜなら、勇者がだんだん強くなっていく中で弱い魔物を大量に生み出し続けたところで、苦もなく一掃されるだけだからです。

勇者側に立てば、低レベルな敵といくらエンカウントしたところでやられようがないですからね。

要するに強力な魔物を多く生み出す必要があるわけですが、そのために必要になるのが「養分の管理」と「生態系の維持」です。

まずは、「養分の管理」について。

先述した通り、養分を持つ土からは魔物が生まれます。

生まれる魔物のランク(強さ)は土の養分量と対応しており、養分を運ぶ性質のある下級魔物を上手く誘導したり、場合によっては魔物を間引いて養分を土に返したりすることで手早く強力な魔物を生み出すことができます。実力が出る部分ですね。

次に、「生態系の維持」について。

ある程度魔物を生み出せば。魔物は出産や分裂によって増えていきます。生命の神秘。
ただし無条件で増えていくわけではなく、食事によって体内の養分を一定以上にする必要があります。

そして、「食事」とは他のゲームにありがちな給餌システムを指しているのではありません。
ダンジョン内の魔物を食べることによって、彼らは同族を増やしていくのです。

これはまさに「食物連鎖」の構図。
魔物たちの生態系には、明確な捕食-被食関係があります。

つまり、ランクの高い魔物だけを生み出していても、餌となる魔物がいなければそこで打ち止め。
それ以上数を増やせないのはもちろん、勇者にやられるまでもなく餓死してしまいます。

プレイヤー=「破壊神」はいわば生態系の管理者です。
時には魔物を生み出し、また時には間引きながら、生態系のピラミッドを保った状態で魔物を増やしていくシミュレーション能力が必要となります。

このリソース管理作業が、『勇なま』の面白さの根幹を成していると思います。

戦略と偶然が生み出す多彩な魔物

ゲームシステムの基本的な説明は以上ですが、本作の魔物の出現条件や生態には他にも様々な要素があります。

例えば、攻めてきた勇者が使った魔法の残滓から生まれる「魔分」は、「養分」とは別のパラメータとして土に蓄積され、全く別の魔物を生み出します。
さらには倒した勇者の亡骸を味方として活用したり…とやりたい放題。

勇者の襲来という外的要因さえも一つの事象として取り込みながら、彼らはさらに進化していくわけです。たくましいですね。

また、魔物が「突然変異」することもあります。

上記画像のように各魔物に異常種や巨大種が存在しており、さらにはピュア種やレア種なんていうのも・・・。

wikiで調べるな

上級者は狙ってこれらの特殊個体を生み出したりするんですが、多くの場合彼らとの出会いは「偶然」。
戦略性の高いゲームでありながら、「何この魔物!?」という驚き(これは勇者側として皆さんも経験したことがあるはず)を随所で提供してくれるのが良いですね。

『:3D』(第三作)からの新要素である「魔水」も見逃せません。
ダンジョン内に水を流すことで、水棲魔物を生み出せるだけでなく、上手く育てると魔物全体の「知能」レベルを高めることもできます。

これによって、ムシ類がムシ塚を作るようになったり、トカゲ類がトーテムポールを建てるようになったりと、もはや文明に近いものを生み出せてしまいます。

「魔水」関連は非常に強力で、難易度が高めな本作の初心者救済要素にもなっています。

上手く生態系を維持・発展させられれば、当初のコケだらけのダンジョンからは想像もつかないような魔王軍を作り出すことができます。
勇者が攻め入ってきた時、一族や縄張りを守るために必死で戦う魔物たちの奮闘には、きっと心を動かされるはずです。

キャラクターやテキストの魅力

プレイヤーを「破壊神」として召喚する「魔王」。
本作に登場するキャラクターと呼べるのは、魔王とその「ムスメ」くらいのものです。

ひとたび勇者と接触すれば簀巻きにされて連れていかれてしまう、言ってしまえば「姫」ポジションの彼ですが、非常にお茶目で魅力的なキャラクターになっています。独特の声も好き。

プレイヤーや勇者に対して容赦なく浴びせられるメタ発言の数々の中には、思わずニヤリとさせられるものもあるはずです。

そんな彼だからこそ、クリア後にしんみりと別れを惜しむ言葉は印象に残ったりもします・・・。

また、魔物や勇者、オブジェクト等の詳細が記される「ずかん」の読み応えもすごいです。

作品を通して多彩なパロディネタが散りばめられており、そのネタ元もゲームからインターネットスラングまで多岐に渡ります。

珠玉のエンディング映像

最後に強調したいのが、本作のエンディング(スタッフロール)映像の素晴らしさです。
私が決めることではありませんが、素晴らしいバッドエンドとしてゲーム史に残るほどの出来だと思っています。

本作は一貫して古き良きドット絵による2Dモデル4が使用されていますが、そのドット絵が最後の最後に驚きの進化を遂げるんです・・・!

ネタバレ要素はそんなにありませんが、できればご自分のプレイ後に見ていただきたい映像です。

画面全体の一枚絵をドット打ちするだけでも大変だろうに、これだけの映像を作るとなると・・・もはや想像を絶する技術と作業量ですよね。

総評

非常に奥深いゲーム性が特徴の作品で、難しい中でも試行錯誤や魔物との出会いを楽しめる名作です。

面白いからこそステージ数がやや少なめに感じてしまう部分があるので、隠しステージやレア魔物を出現させて「ずかん」を埋めていく5のもオススメの楽しみ方ですね。

是非、一度プレイしてみてください。

余談

冒頭で触れたもう一つの名作『パタポン』は、なんと10年以上の時を経て「精神的続編」の『RATATAN(ラタタン)』制作が発表されました!

「精神的」続編とはいえ、この映像を見ると・・・まぎれもなく進化した『パタポン』です。ありがとう。

現在(2023/8/31まで)、クラウドファンディングも実施中です。

もちろん直接の関係はないんですが、同期とも言える『勇なま』についても、今後何かしらの動きがあったら嬉しいですね。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。
リツイート・Twitter(X)のフォローなどして頂けると大変嬉しいです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました